ヨーロッパでは規制強化が進む電動キックボード

日本では電動キックボードの規制が緩和され、16歳以上の人なら運転免許がなくヘルメットをかぶらなくても電動キックボードに乗れるようになりました。
それまでは電動キックボードは原動機付自転車という分類でしたが、時速6km以内でランプを点滅させることという条件はあるものの、歩道でも走れるようになったのです。

もちろん、すべての電動キックボードが免許不要でヘルメットなしで走れるわけではありません。
最高速が時速20km以下という低速タイプに限った話であり、免許がいらないといっても交通違反は処罰の対象になります。
酒気帯び運転や信号無視が許されないのは言うまでもありません。

しかし、2023年4月からヘルメットの着用が努力義務となった自転車と比べると、電動キックボードの規制緩和の動きはあまりにも急ではないでしょうか。
転倒リスクはむしろ自転車よりも高いのに、ヘルメットをかぶらなくてよいことを考えると、自転車よりルールがゆるくなったと言っても過言ではありません。
このような動きに対して「電動キックボードが普及する欧米と比べて日本は遅れているから」と言う人がいますが、その見解は正しいとは言い難いです。
確かに欧米諸国の電動キックボードの普及率は日本よりずっと高いのですが、だからといって規制がゆるいわけではありません。

実際、フランスでは電動キックボードにまつわるトラブルや事故の増加から、全国的に規制を強める動きが出ているぐらいです。
パリ市内での電動キックボードのシェアリングサービスの是非を問う住民投票まで計画されています。
また、電動キックボードの事故での死傷者数が、イギリスではわずか1年で900%もアップしたそうです。
そのため、規制を見直す流れとなっています。

欧米の動きに逆行する日本

電動キックボードが免許もヘルメットも不要になったのは、危険性が少ないと判断されたからでしょう。
それゆえ、今回の規制緩和で自転車よりも気軽に乗れるようになったという意見もあります。
しかし、両者を乗り比べた人ならわかるはずですが、電動キックボードの方が安全というのは誤解です。

自転車より車輪が小さい電動キックボードの場合、自転車では気にならないような小さな段差でも簡単に転倒してしまいます。
しかも、横に転倒するのではなく前後に転倒するケースが多いため、転倒して頭を打って大怪我を負うリスクは高いのです。
実際、そのようなケースで日本国内でも死亡事故が起こっています。

では、なぜ日本では今になって電動キックボードの利用がゆるくなったのでしょうか。
ネット上では「誰かの利権が絡んでいるからではないか?」との憶測が出ていますが、いずれにせよ利用者が増えることは確実なので利用には注意したいものです。